こんにちは、草食系高校教師です。
今日は「【中学校1年生】教科書SUNSHINEを使った英語授業 〜授業内容やスケジュール〜」をお伝えします。
私は現在中高一貫校に勤めています。
これまでは主に高校を担当していましたが、2022年度は中学校の割合が増え、中学校1年生・中学校3年生・高校3年生を担当しました。
2022年度以前は、トータルで4単位ほどしか中学校の授業に携わった経験はありませんでしたので初心者でした。
今日はその初心者が新しいカリキュラムになった中学校1年生の授業を1年間経験して良かった点・悪かった点などをお伝えしていこうと思います。
中1英語を担当してる先生が思ってること代弁しますね。
文量多いってえええ
内容難しいってえええ
文法難しいってえええ
新出単語多いってえええ pic.twitter.com/WSlwKGLbPt— 草食系高校教師✖️ブロガー✖️英語授業アクティビティクリエーター (@soushokuteacher) October 8, 2022
それでは見てくださいねー!
中学校1年生のカリキュラム内容とスケジュール
まず初めに、「中学校1年生のカリキュラム内容とスケジュール」を見ていきましょう。
勤務校は3学期制ですので、学期ごとに4PROGRAMずつ進む(3学期を除く)ように授業計画を立てていました。
それでは、月別のカリキュラムを見ていきましょう。
さらに、パフォーマンステストを各プログラムの文法項目に合わせて作成・実施していました。内容は新学習指導要領の4技能5領域のうち「話すこと[やり取り]」と「話すこと[発表]」を意識して、教員と一対一で行う対話形式と一対全員で行う発表形式で実施していました。
それでは具体的な授業内容を見ていきましょう!!
具体的な授業内容
それでは「具体的な授業内容」を見ていきましょう。
この章では、以下の4つの流れでお伝えします。
- 授業プランの組み立て方
- 文法授業の流れ
- リーディング授業の流れ
- 小テスト・パフォーマンステスト・提出物
①授業プランの組み立て方
1つ目は「授業プランの組み立て方」です。
2022年度の中学校1年生は、2020年度から小学校5・6年生で教科化された外国語の授業を2年経験した最初の生徒になります。
生徒の大きな経験を使わない手はありません。
私は中学校での授業は初心者ということもあり、授業をどのように進めるかは非常に悩みました。基本的に「目の前の生徒の能力や状況に応じて臨機応変に授業を行う」が私のスタイルですが、それは引き出しの中に大量のデータが入っている場合です。
しかし、中学校用の引き出しの中はほとんど空っぽなので、まずは「生徒がこれまで何をしてきたのかと、向こう3年間で何を身につけなきゃいけないのか」の順算と逆算をしました。
さらに、高校での10年以上の経験を通して中学校のうちに身につけて欲しかった私の願い(語順の理解・品詞の理解・語彙力の強化)も含めました。
順算と逆算の中で使用した資料は以下の通りです。
- 外国語活動、外国語の目標の学校段階別一覧表(https://www.mext.go.jp/content/1407196_26_1.pdf)
- 小学校と中学校の教科書
- 小学校教員との申し合わせ
- 4月に行った授業数回
4つ目の「4月に行った授業数回」ですが、やはり、生徒の能力や実態を自分の目で見なければ机上の空論になってしまいます。「150キロのストレート」というデータがあっても、伸びやキレ・フォームの癖などを実際に見なければどういう対策をとっていいかわかりませんよね。それと同じことです。
そして、最終的にどのように授業をしていくかは4月に対面した数回でこれからの展開を決めました。
以上、私の授業の組み立て方となります。
それでは②文法授業の進め方と③リーディング授業の進め方を見ていきましょう!
②文法授業の流れ
2つ目は「文法授業の進め方」です。基本的にこの文法授業も次で紹介するリーディング授業もオールイングリッシュで授業を行っています。
各プログラムには必ず新しく学習する文法項目があるので、本文の内容に入る前に扱うようにしていました。
それでは基本的な進め方を見ていきましょう。
- Greeting
- Warm-up Activity
- Oral Interaction(Introduction)
- Pattern Practice with Visual Aid
- Questions and Answers with worksheet or workbook
- Activity
上記の通り、小学校で教科化された外国語の授業を2年間受けてきているので英語でのやりとり(Oral Interaction)からスタートします。生徒とやりとりしながら進めるのでIntroductionではなくInteractionという言葉をあえて使いました。
これは学習語彙数が少ない中1の4月や5月でも基本的にこの形を取っています。この場合、語彙力がないので、簡単な英語に直す必要があります。私は世界の果てまでイッテQの出川イングリッシュのように単語とジェスチャーで伝えることも多々ありました。
そして、ここでの発問のコツは「General to Specific」です。TESOLの授業を受講していたときにしつこいほど言われた言葉になります。
例)過去形
T:Do you like sports?
S:Yes, I do.
T:What sports do you like?
S:I like soccer.
T:Are you a member of soccer team?
S:Yes, I am.
T:Did you play soccer yesterday? (生徒がわからない場合はジェスチャー付きでplay soccer yesterday?)
S:Yes.
「スポーツ好きか→何のスポーツが好き?→サッカー部?→昨日サッカーした?」と内容を「General to Specific」で発問します。
その後、視覚教材を使い、パターンプラクティスを行っていきます。視覚教材付きのパターンプラクティスはオールイングリッシュの授業には欠かせないかもしれません。Oral Ineractionの時に理解できなかった生徒は、ここで初めて「あ!」と気付ける大切な時間になります。
その後、その気づきを元に問題を解きます。この問題の質も大事で、コツは「Majority to Minority」です。全員が解ける問題→数人が解ける問題へとレベルを徐々に上げていきます。
これは定期考査の作り方でも紹介していますが、難易度を3段階に分けるようにすると生徒の躓きがわかるかもしれません。
また、問題の種類は教員の狙いにもよるかもしれませんが、私は上記のように「語順の理解」を最優先に考えていたので、簡単な穴埋め・語順整序問題・英作文を主に扱っていました。そして、質よりも量を重視していました。「習うより慣れろ」派です。
その後、学習文法項目をどのように使うかを知るために、アウトプット型のアクティビティを行いました。
この授業の進め方はあくまでも一例です。他にも導入の方法を工夫していたので参考までに以下をご覧ください!
Oral Interaction以外の導入例を紹介します。
- 洋楽→推測
- アクティビティ→推測
- 動画(ドラえもんやムーミンなどの英語版)→推測
馴染みのある動画での導入は注意を一瞬で向けられるので優秀なのですが、準備が大変なんです。。。
授業は探求活動と同じで答えはありません!!! それでは③リーディング授業の進め方を見ていきましょう
③リーディング授業の流れ
3つ目は「③リーディング授業の流れ」を見ていきましょう。
中学校1年生の教科書SUNSHINEは、PROGRAM8までは長文がそれぞれ2つしかありません。(PROGRAM9〜10は3つ)
1つの長文には1時間〜2時間を費やすイメージで本文を扱っていました。
それでは基本的な流れを見ていきましょう。
- Greeting
- Warm-up Activity
- Checking the meaning of new vocabularies
- Pronunciation Practice of New Vocabulary
- Giving questions each other in pairs
- Listening quizzes(T/F question or Yes/No question)
- Silent Reading with Two Reading Questions for Comprehension
- Explanation
- Reading aloud with comprehension(Chorus→Buzz→Pair→Repeating→shadowing)
- Chunk Sheet(individual→pair)
この流れで授業を行うようにしていました。
最後の「Chunk Sheet」は左側に、塊ごとに区切った日本語、右側に空欄を設けたワークシートです。左側の日本語にあった英語を右側に記入します。その後、ペアでお互いに問題を出し合う活動(日本語→英語・英語→日本語)を行います。
④小テスト・パフォーマンステスト・提出物
それではこの章の最後に「小テスト・パフォーマンステスト・提出物」を簡単に見ていきましょう。
◯小テスト→各パートの単語テストとPROGRAMごとの単元テスト
◯パフォーマンステスト→各プログラム1回実施(内容は学習文法を用いたもの)
◯提出物→ワークブック(PROGRAMごと)
単語テストは別の単語帳を使わず、教科書に出てくる新出単語と本文の内容から出題していました。単語のみを書くのではなく、日本語に合った英文を書く問題も出題していました。
良かった点・悪かった点
次に、「良かった点・悪かった点」を見ていきましょう。
それぞれ3つに分けてお伝えします。
①良かった点
それでは「①良かった点」を見ていきましょう。
良かった点は以下の3点です。
- オールイングリッシュ
- 文法学習の流れ
- 音声理解から入るリーディング授業
- ウォームアップアクティビティ
1 オールイングリッシュ
1つ目に良かったのは「オールイングリッシュ」です。
オールイングリッシュ授業により、生徒の音声インプットは膨大な量になりました。Foreign Service Institute (FSI)の資料では、日本人が英語を習得するために必要な音声インプットの時間は2200時間と言われています。
これは「完全に習得するまで」ですので、学校教育には必要のない情報かもしれませんが、インプットは必ずアウトプットにつながります。ご存知のように、人間はインプットしたものしかアウトプットできないのです。その過程を文字化すると、「インプット→気づき(Noticed Input)→理解(Comprehended Input)→内在化(Intake)→統合(Integration)」というプロセスを経て、はじめてアウトプットできるようになると第二言語習得研究界隈では考えられています。
そのため、インプットはとても大切な時間になるのです。
1日24時間のうちたった50分だけ英語だけを使う時間を設けてもいいではありませんか?
よく「教員が発する英語を生徒が理解していないからオールイングリッシュ授業は無意味」だという先生方もいますが、教員が発する全ての言葉を生徒は1度で理解しなくてもいいと思っています。最初は1単語、2単語、それが後々1文を理解できるようになればそれでOKですし、2回目3回目に聞いて理解できればいいのです。
例えば、ジェスチャーと共に「Turn over your worksheet」と教員が言ったとします。最初は、ジェスチャーを見て生徒は紙を裏返すでしょう。しかし、次に言葉だけを言ってみます。そうするとほとんど全員が紙をひっくり返します。「Turn over your worksheet」が「紙を裏返す」とインプットされた瞬間です。
そして、オールイングリッシュは、何よりも「英語を英語で捉える感覚=英語脳を作る」ためにはとても良い授業スタイルなのではないでしょうか。
これは受験対策でもあります。高校受験や大学受験では英語の試験は読解中心になり、読むスピードが鍵になります。いちいち日本語を介して読んでいては時間が足りなくなってしまいます。多聴によるインプットはその一助となるでしょう。
2 文法学習の流れ
2つ目に良かったのは「文法学習の流れ」です。
私が意識していたのは「インプット→インテイク→アウトプット」です。これはブレずに1年間やり通しました。それぞれの私の捉え方は以下の通りです。
- インプット→気づく
- インテイク→気づいたものを自分ものにする(知る)
- アウトプット→知った知識を使える知識にする
具体的には「スモールトーク→パターンプラクティス→問題→音読→アクティビティ」の流れです。特に、アクティビティは「知った知識」を「使える知識」にするには絶好の機会だと思っています。
アクティビティをすることで、「ほら、今習ったことはこういう時に使えるんだよー」というメッセージになります。1つの教科と捉えるのではなく、あくまでも1つの言語であり、コミュニケーションのツールであることを伝えたい私の不器用な方法です。
3 音声理解から入るリーディング授業
3つ目に良かったのは「音声理解から入るリーディング授業」です。
生徒は英語の文字情報には慣れていませんが、音声情報であればアウトプット中心の小学校の英語授業を経験しているので、小学校との架け橋期間である4月〜5月は、クラスの7割くらいは理解できると思います。(小学校の取り組み方で差が出る可能性あり)
上記の「リーディング授業の流れ」の通り、新出単語導入・練習後、本文の音声を聞く内容理解から始めました。
慣れていない文字情報から始めるよりも音声情報からの方が授業に対する意識の向け方に差が出るような気がしています。(文字情報から始めたパートもありました)
問題の設定の仕方の工夫も必要かもしれません。最初のうちは、「主人公は誰?」「誰と誰が会話していた?」「ケンは何が好き」など、簡単に答えられるもので良いと思います。
そして、PROGRAMを積み重ねてから、学習文法項目の内容も入ったリスニング問題を出しても良いと思います。要は、いきなり跳び箱20段跳ぶよりも低い団からの方がやる気出るという話です。
4 ウォームアップアクティビティ
この章の最後は「ウォームアップアクティビティ」です。
文法授業とリーディング授業の両方で必ず実施していました。
詳しくは以下をご覧ください!!
②悪かった点(反省点)
それでは「②悪かった点(反省点)」を見ていきましょう。
もうね、反省しかないんですよ!!どの学年を持ってもどの教科や科目を担当しても毎日反省です。
今日はその中でも皆さんに役立ちそうな内容を2つお伝えします。
1 フォニックスの導入時期
1つ目は「フォニックスの導入時期」です。
上記の「年間計画例」の画像を再度ご覧ください。4月に「フォニックス」の授業を行いましたが、これは時期をずらしたほうがいいです。本気と書いてマジです。
恥ずかしながら私が現在の勤務校で導入しました。しかし、中学校1年生の4月には早すぎたと思います。
今年度、中1の4月に副教材を使ってフォニックス取り入れましたが、効果は薄かったです。発音を伸ばすという観点では効果は少しありましたが、読めない単語を読めるようにするという観点では単語をほとんど勉強していない4月では有効ではなかったと思います。単語量が増えてからの導入をお勧めします。
— 草食系高校教師✖️ブロガー✖️英語授業アクティビティクリエーター (@soushokuteacher) January 8, 2023
中学校1年生の4月の生徒はまだまだ小学生です。9割9分の生徒が「英語なんて小学校と同じ感じでしょ?楽しく活動して終わり!!」と思っています。
いくら「小学校と中学校合わせて2500語覚えなきゃいけないんだよー」「その単語を覚えるためにはフォニックスは重要な役割を果たすんだよー」と言っても残念ながら人生2周目以上の生徒以外は理解できません。
つまり、綴りや発音の方法を学習でき、読み書きの自立を図るフォニックスを4月に学習したところで「何をしているのかさっぱりわからない」状態になります。今していることがこの先の何に繋がるのか体験しないと我々大人でも「ふーん」って感じなのと一緒です。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶといったところです。
したがって私のおすすめは、ある程度語彙力がつき、中学校の授業スタイル・成績の重要性・英語学習の難しさを知った(理解)した、1年生の2学期後半〜3学期の間か高1の最初に行うのがベターだと思います。
野球経験1日目の生徒にカーブの打ち方を教えないですよね?時期とタイミングは大事です!
2 成績の乖離が激しかったこと
2つ目は「成績の乖離が激しかったこと」です。
もうね、中1英語は詰め込みすぎてわけわかんなくなってるよ。
教科書の作りが上位層しかついてこれないような感じだし、二極化が半端ないよ。中高一貫の超進学校向けなのかな?
— 草食系高校教師✖️ブロガー✖️英語授業アクティビティクリエーター (@soushokuteacher) November 20, 2022
私の授業の進め方のせいもある!あるけど、1つ言わせてください。
小学校では教科化になり、生徒(児童)は既に得意不得意バイアスがかかっています。さらに、2021年度からの中学生はそれまでの2倍の英単語(約1200語→約2500語)を学習します。その上、以下の内容が中学校1年生のカリキュラムに追加されました。
- I want to ~.
- like ~ing
- be good at ~ing
- look + 形容詞
- be動詞過去形(肯定文・疑問文)
- There is [are] ~.
- 過去進行形
これに「4技能5領域よろしく!」「パフォーマンステスト頼むで!」「SDGsも教えたってー」という感じです。
天下の大将軍と一対一になる歩兵くらい絶望的です。
カリキュラムに文句を言っても変わらないので、教える側が変わるしかないのかもしれません。下位層をなんとか中間層に持っていく授業スタイルや教科担、学年の取り組みをするしかないですね。せめて2対6対2の法則くらいのレベルまでには持っていきたいです。今は4対2対4くらいの割合です。
最後に
今日は「【中学校1年生】教科書SUNSHINEを使った英語授業 〜授業内容やスケジュール〜」をお伝えしました。
シラバス作成や授業プラン作成の気づきになればとても嬉しいです。
本日は以上です。ありがとうございました。
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